edamamesakuraの部屋

趣味で描いてる漫画や、好きな作家さんについて書いています。

六田登先生「陽気なカモメ」

ボクシング物です。
主人公、日高瞬は大阪出身でスリの名人。その手癖の素早さを見込まれてボクシングジムに住み込むことになる。
そこのお嬢さんの渚に一目ぼれして、彼女の為にチャンピオンになる決心をする。

六田先生は大阪出身ですが、関西弁の主人公というのはおそらくこれが初めて。
凄く登場人物達の人間模様が濃厚で、暖かい印象です。
ジムの先輩である克男(かつお)は泣かず飛ばすで引退しようかどうか迷っている。
自身を汚いドブ川に投影し、「醜くよどんでやがる」とつぶやくと、
後輩の瞬はドブ川に飛び込んで「克男さんの嘘つき、こんなに流れが急で元気やないか!」と叫ぶ。大阪人情が熱いです。

やがて瞬の所属するカモメジムに岩本と名乗るサングラスで無精ひげの男が登場します。
この男と瞬の間に生まれた結びつきの強さというのは、六田先生の当初の構想を遥かに超えていたのではないかと思います。
選手とコーチという関係を超え、更に恋愛とも違う何か強い絆がそこに出現し、その二人の思いの強さに、
とうとうヒロインの渚まで「あなたって、おっちゃんおっちゃん(岩本のこと)ばかりね」と嫉妬してしまいます。

単行本10冊でコンパクトにまとまった完成度の高い作品だと思います。