edamamesakuraの部屋

趣味で描いてる漫画や、好きな作家さんについて書いています。

相米慎二監督「雪の断章 -情熱-」

追記 2021年6月19日

8月にブルーレイ出るのですね。東宝さんもっと宣伝お願いします。

tower.jp

 

 

 ブルーレイには斉藤由貴さんのインタビューやメイキングが付くそうです。

 

 DVDの方は2千円とお安い。

 

おそらく、原作者の佐々木丸美さんのご遺族がお許し下さったのでしょう。有難うございます。

 

 

 

この作品も公開当時はなんだこれ?と思いましたが、忘れられないシーンの多い作品です。

殺人犯の疑いをかけられた夏樹伊織(斎藤由貴)が自身が歌う主題歌「情熱」をバックに、縁石の上を危ういバランスを取りながら延々と歩くシーン。

笠置シヅ子の「買い物ブギ」をバックに海へ飛び込む。

「もう生きられない」と入水自殺しようとする世良公則に向かって「私につかまって!」と手を伸ばすシーン。

桜の樹の前で斉藤由貴榎木孝明世良公則の3人がキャッチボールをする遠景の長回し。警察のレオナルド熊がそれとなく犯人の確証を掴んでいる事を匂わし、
その事を隠し続ける事の意味を犯人はわかっているんだろうかね?と聞こえるようにつぶやいている時、世良公則の表情は全くわからない、想像するしかない。

夜、3人でビールを飲みながら桜の樹の周りをぐるぐる回りながら歌うシーン。

ようするに由貴と世良のシーンの印象が強くて、由貴が本当に恋している育ての親代わりである榎木のシーンはそれほどでもない。


冒頭の長回しワンカットが有名なこの作品ですが、なぜそうしたかは原作小説を読むと納得出来る。
かなり長い小説でしかも最初の幼少期のエピソードも長い。しかしそれを切ってしまうと、その後の話がわからなくなる。
しかし1時間半の時間で斉藤由貴の映画にしなければならない。ならば幼少期を最短時間で終わらせたい。
ひたすら短くしたいが為の演出なので、何も事情を知らない初見では、ドリフの全員集合!のセットの舞台裏を観ているような印象でした。

当時の相米監督のインタビュー記事だと、原作小説に対して古くさいとか乗り気でないような発言ばかりなので、
こちらも佐々木丸美さんの原作をそういうものなんだろうと侮っていましたが、かなり後から図書館で見かけて読んでみたら、
面白いし、何より主人公の頭の良さとか理知的な部分が凄くて、これは思春期の少女にとってバイブルになるような作品だと思いました。
相米映画が身体で動く作品だとしたら佐々木小説は頭で考える作品。
どちらにも強力な魅力があるけれど、お互いに相容れないスタイルだったように思います。

最後の忠臣蔵の映像はなんだろう?今もよくわかりませんが、なんとなく「ようするにこれはメロドラマだよ、ちゃんちゃん」
みたいな監督の原作に対する距離感のように感じられ、そこも熱烈な原作ファンからすれば馬鹿にされたような印象になるかもしれません。

しかし、それでも前述のようにこの作品には印象深いシーンが多く、全体の歪さが作品の魅力になっていて大好きな映画です。
長らくソフト化される事がなく、観る機会の少ない作品でしたが、今現在Amazonプライムビデオでレンタルや購入が
出来るようになっているみたいです。

 

雪の断章?情熱?

雪の断章?情熱?

 

 

 

雪の断章 (創元推理文庫)

雪の断章 (創元推理文庫)