edamamesakuraの部屋

趣味で描いてる漫画や、好きな作家さんについて書いています。

増田みず子「隅田川小景」

増田みず子さんは好きな作家さんなのですが、内容はあまり覚えていない。
ストーリーというか、文章から漂う雰囲気とか、作者が投影されている主人公が、物凄く自分の中にすーっと入ってくる。
私にとって、増田みず子の"私"が、村上春樹の"僕″みたいな存在のような気がします。

初期の作品群はいずれも主人公が孤独。たとえ周囲に優しい人がいても、根幹的な部分が一人で孤独。
けれど、それを不幸とか悲劇として受け止めていないし、それが自分の資質なのだと受け容れている。

独りや孤独を恥ずかしい、悲しい、惨めなものとして、悩み苦しんできた思春期を送ってきた自分にとって、
20代半ば頃に出会った増田さんの小説は、自分を慰め、そんな悪いものでもないよと癒してくれる心の処方箋のような存在でした。

その後、40代で漫画を再び描き始めましたが、自分にオリジナルを作る才能はないのか?それなら原作を元に描いてみたらどうか?と考え、
手掛けてみたのが、増田さんの短編「隅田川小景」でした。

 

隅田川小景

隅田川小景

 

 増田さんは東京の隅田川の近くで生まれ育ち、この川が故郷と捉えています。
昭和3,40年代頃、工場から出る汚水で川が最も汚れ、コンクリートで川全体を囲っていた時代。
主人公の周りの人達は皆、隅田川は昔からずっとそうだったと思っていますが、主人公の記憶にはなぜか綺麗な川の光景がある。
実は、戦争終了直後、川沿いの工場は稼働停止していて、一時期だけ川の水が綺麗になっていた時期があった。
その記憶を共有している友人との交流を描いています。
(もちろん原作の使用許可はないので、あくまで自分が漫画を描くためのレッスンとして非公開で描きました)

これを描いた事が次の糧になったのかどうか…取り敢えず、小説を漫画にするという方法を一つ実行した事で、
次に何を描きたいか考え始める事になりました。

 

 

この作品が増田さんの代表作と思います。

個体として存在している自分(人間)を生物学的な見地で描いていたと思います。

シングル・セル (講談社文芸文庫)

シングル・セル (講談社文芸文庫)